福島県立美術館に行ってきた。

福島県立美術館ミネアポリス美術館日本絵画の名品展の備忘録です。

見応え充分の素晴らしい展示でした。狩野派琳派という大きな流れをおさえつつ、平安から明治初期ごろまでの作品が展示されています。

 


まずは水墨画。この企画展全体を見終わった後、墨と筆がつくる力強さと繊細さ、画面に展開される独自の世界を、もっと観てみたいという気持ちになっています。それくらい僕にとって印象的なセクションでした。作品としては狩野派の雪村周継、狩野雪山、狩野雪村がメインだったでしょうか。大きな屏風が多かったです。大きい画面に書かれる風景画は、視界の多くを支配する分、その絵に入り込める感が大きいように思います。雪村周継の「花鳥図屏風」は、近くで見た時には白鷺の絶妙なゆるやかさ、細部の硬さに目を奪われました。しかし遠目に屏風全体を見る時、白鷺は白く抜かれている分ぱっと絵の脇役になり、一緒に描かれている鯉あるいは燕に主役を譲ります(と感じた)。見る距離でこんな印象が変わるものなのかと驚きました。

それから、背景と人物を明らかに異なる筆致で描くことで独特の世界観を生み出す人もいます。狩野雪村のは背景である田畑のゆるい線と、そこにいる人物の角張ったような筆跡とを明確に使い分けています。その結果生まれるどこかユーモラスで牧歌的な雰囲気。これとても好きでした。

筆で線を描くというシンプルなものなのに、それぞれの絵師のつくる線には、やはり個性が顕れるというのも面白いです。いいなと思ったのは狩野雪山の「郡仙図襖」。カエルがいい感じです。不服そうな表情も愛らしさ満点です。

 

ここからは江戸時代のが多かったのかな。浮世絵含め。

ここで気になったのはなんといっても三畠上龍。今日初めて知りましたがとても素敵な2作品がありました。いわゆる美人画ですが、まず本当に美人さんを描きます。色っぽい!決して露出してるとかではないですが、なんかリアル。ひとつには、これまた筆の極端な使い分けによる書き分けがポイントとしてありそうです。顔はしっとりと、繊細どころか、おそらく輪郭線なんてないように描いています。しかし首からしたの線の蠢くような荒々しさ。けれどそれらを違和感なく両立させる衣服の柄。自然と目線を顔に集めるような効果があるんでしょう。

また題材も面白く、覗き見る子供の怖いくらいのあどけない仕草と、風に足元をめくられた女性のこれまた最上級の色っぽい美人の表情の対比。ユーモラスでもあり、同時に深遠でもあります。

 


そしてこの人のが観れて嬉しいと思ったのが、曾我蕭白。堂々たる大屏風。いわゆる奇想とか言われる画家だけど、その分キャッチャーということか、結局はこういうの好きなんだよな〜。全身を使って描く様な姿が目に浮かぶ様な(実際はどうか知らないけど)迫力ある筆致。それに、力強いことと同じくらい、グラデーションの技術もまた別の強い存在感を放ってる。筆の強弱ももちろんあるけど、種類の違う「強強」の取り合わせっていうのが、蕭白の魅力かもしれないなと思ういました。鳥の親子も愛らしさいっぱいに描かれています。

それと佐竹永海という絵師の「風神雷神図」も面白い作品でしたし、会津の蒔絵士の家に生まれたというバックボーンも興味深かったです。どちらかといえば大量・廉価というのが会津の漆産業だそうですが、そういった中から美術という方向に進んだ佐竹。その人生はどのようなものだったでしょうか。

 


伊藤若冲にも特にそうですが、筆絵で描かれる動物のかわいさってなんなんでしょう。対象を描く線の太さはどのよいに使い分けられるのか。字を書くときのような筆の都合が優先されるのか。あるいは前後の遠近感を考慮してるのか。こういうところに注目して、もう一回くらい見ておきたいきがしてます。

 

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三畠上龍

 

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