福島県立博物館に行ってきた。

福島県立博物館の企画展「あはいのクニ あやかしのクニ」を観てきました。テーマである「あはい」とは、「間」の意味。この世である中央と、得体の知れない世界としての未開の土地。その二つの世界の「間」に位置する陸奥(東北)を指す言葉として用いられています。間や境界というのは個人的にも興味深いテーマでもあり、人々が不可解なものをどう認知してきたのか、ということを知ると、当時の人々の畏れや信仰心、ファンタジーを垣間見ることができるようです。

 


向こう側とこちら側という、境界によって隔たれる世界観をもっていたということを、もっとも強く感じさせるのは、最初のセクションでしょうか。会津の地域に伝わるオンバサマ、オシンメイサマを始め、一年の節目に来訪神として現れる異形の者たち。秋田のナマハゲはとても有名ですが、宮城の水かぶり、山形のアマハゲというのもあり面白かったです。普段は別の世界に存在し、時折こちら側の世界を訪れる、言ってみれば「約束された」来訪があるという性格を持った者たちですが、そのことは、それを受ける民衆にとって、よりはっきりとした神への畏怖につながるものとなったのではないかと想像します。

オシンメイサマは、これまた東北地方によく見られるという「羽山信仰」との繋がりが深い神様です。神託による占いをしてくれる他、木で作られた神様自身で痛い所を叩くと治してくれるという力も信じられていたようです。たまたま居合わせたお子さんが「これが怖い」と言っていましたが、独特な雰囲気のある古い人形という感じで、確かに。と納得してしまいます。

オンバサマは安産の守り神としての性格があるようです。こちらは始めて見かけたもので、詳しいことはこれから探りたいと思っています。

 


狩野派の狩野洞雲益信による「百鬼夜行図」の絵巻もありました。先日訪れたミネアポリス展で水墨画の魅力を感じていたのもあり、また狩野派の方の作品が観れたのは嬉しかったです。躍動感ある怪物の動き、ユーモラスな表情がいい感じです。

 


羽山信仰について少し触れましたが、この言葉は、あの世としての山の入り口となる端の(比較的低い)山が転じて「端山」「羽山」となったことから生まれたと言います。中央から見た東北が境界地であったことと同じように、東北の中においても、山と里を、あの世とこの世とを結びつけ、境界を作り、その場所を畏れてきました。畏れるものを想像し、生み出されてきたこれらの文化を観ると、神という存在をずっと強く感じるような気がします。

 


そこを過ぎると、河童や人魚などもお馴染みの妖怪ゆかりのものが展示されています。僕が子供の頃に「地獄先生ぬーべー」をよく読んでいたので、そのエピソードが思い出される妖怪も多く、懐かしかったです。ひょっとしたらその漫画に出てきた挿絵もあったかも(ぬらりひょんとか)。

 


会の目玉は、福島県相馬市にある金性寺の幽霊掛け軸かもしれません。僕は正直さーっと流し見で済ませてしまいましたが、結構な量がありましたから、圧巻です。...ガチっぽいものは苦手なのです😅

 


最後に、会津に伝わる怪談話の朗読があります。元の文書もパネルで展示されていましたので、特に面白いと思ったものを画像で載せておきます。これらは、実際の地図と照らして場所がある程度特定出来ているものが選ばれているとのこと。現在の姿も合わせて想像出来る土地勘があれば尚楽しいかもしれません。

 


これらは、不思議さや不可解さというのが話の骨子ですが、いくつかの話はその登場人物によってより魅力的になっているように思います。例えば、「この老婆は怖がる気持ちを持っていないので、握り拳を...」とか「どうしたらいいか分からず、そのまま埋めた...」とか。より人間の生の力強さあるいは、情けなさを強調しているようで、それがなんとも言えない不可思議との対比になっていると思います。

 

すっかり涼しいお盆の気候になっていますが、夜の開館日を狙っていくのもまた良さそうですね。

 

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狩野洞雲益信「百鬼夜行図」

 

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